湖北里山の薔薇から湖南ベランダ園芸のバラへ

マキノの自然と雑木林の中で咲かせたバラを紹介してきた著者が引越し後ベランダで育てるバラを紹介

バラの詩(4) アストンの「野バラ」

今から200年前、19世紀には今ほどバラの品種が多様でなかったドイツでは、ゲーテの詩にもあるように野バラにその美しさを感じていたのだろうか。また多くの作曲家がゲーテの詩に曲をつけている。

ルイーズ アストンという19世紀の女流詩人の作品にも野バラという詩がある。



  















   Die wilde Rose                      野バラ


Da droben auf einsamer Höhe              寂しい山の頂に
Die wilde Rose blüht,                    野バラがひとつ咲いている
Und wer sie von Ferne gesehen,             バラを遠くから見たものは
In heißer Sehnsucht erglüht.               大いなる憧れに身を燃やす


Zu ihr über Felsen und Klüfte              岩を越え崖を越えて
Ein kühner Jäger klimmt.                 大胆な狩人がそこまで登る
Schon ist er in nächster Nähe -             とうとう近くにやってきて
Das Auge in Thränen ihm schwimmt.          目が涙であふれてしまう   


Er will sie erfassen und pflücken,            バラをつかみ取ろうとするが
Da strauchelt jäh sein Fuß;               足を不意に踏み外す
Des Abgrunds finstere Tiefe               暗くて深い奈落の底が
Empfängt ihn mit kaltem Kuß.              冷たいキスで彼を迎える


Da droben auf einsamer Höhe             寂しい山のいただきに
Die wilde Rose blüht,                   野バラがひとつ咲いている
Und wer sie von Ferne gesehen,            バラを遠くから見たものは
In heißer Sehnsucht erglüht. -             大いなる憧れに身を燃やす


Louise Aston 1814‐1871                ルイーゼ アストン(1814-1871)


写真(上)は以前ドイツの友人がプレゼントしてくれた壁飾りである。15cmX15cmの陶器製。その画面の左下部分を拡大したのが下の写真。今まさに崖をよじ登ろうとしている人物はゲーテやシラーが活躍していたころのドイツの(当時はプロイセンの)詩人の身なりをしている。この友人がなぜこれをくれたのかは分からないが、彼はいつも何かに憧れていたように思う。しかしその憧れたものを手に入れたのかどうかは知る由もない。この壁掛けを見ると若い頃の彼の姿を思い出し、何故か私の心を締め付ける。